数学で考えるユーザビリティ

好き勝手なデザインができるクリエーターとは違い、企業デザインには「ユーザービリティ」という価値が付いて回ります。
ユーザービリティは口では簡単に説明できますが、「万人に共通する使い易さ」という価値が存在しないので、非常に定義の難しい問題になっています。
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1時間は60分、12時間で1日。
これは生活に身近な、時間の単位です。
でもこの12進数や、60進数が、非常に半端で使いづらいと思ったことはないですか?
分かりやすく10進数での単位にしてくれればいいのに・・・、もっと分かりやすく計算しやすくなるのに、と。
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記数法の歴史を見ると、古代バビロニア人たちは60進法(楔形文字)を、古代ローマ人たちは12進法(やがてローマ数字の記号体系を移行する)を使っていたようです。マヤ人は20進法、部族によってはコンピュータと同じ2進法を使っていたとされます。
前3世紀頃、インドのヒンドゥー教徒によって初めて使われたアラビア数字(位取り記数法)は、現在世界で最も広く使われるようになりました。このあたりで「ゼロ」の概念が利用されるようになり、ヨーロッパに伝わる頃にはさらに使い勝手が良くなりました。
しかし、古代人たちは、なぜ12進法や60進法を使っていたのでしょう?
それは、天体の運行に由来していると言われています。
ロケットも天体望遠鏡もない時代に、彼ら古代人は、星の周期を知っていたのです。非常にロマンチックでミステリアスな話ですね。それを起源とする12や60という区切りの単位。彼らはそんな数字を身近にして生活していました。
10進法の由来は、人間の指が10本だったから、と言われています。
手の指を使って簡単に計算できる、という理屈が発明者にはあったのだろうと思います。
数字に価値や優劣をつけるとする・・・これは非常にナンセンスで非科学的なことですが、例えば10を12と60と比べてみるとどうでしょう。
10個のケーキを3人で分けようとする。・・・割り切れない。そんな経験は誰にでもあるはず!
ところが12や60という数字では。
簡単に割り切れてしまいます。
10という数字は2と5でしか割り切れず、非常に不便で使い勝手が悪いのですが、12は2でも3でも4でも6でも割り切れる非常に優秀な性能を持った数字であるといえます。60は数が多いのもありますが、単位としてはかなり便利に使える数字です。時間や日数の計算をする上で、割り切れやすいこの数字は、日程をたてやすく非常に優れた使用感をもたらします。
普段当たり前にして使っている考え方の10進法。
キリの良い数字のはずの10という数字は、12や60という数字と比べてみたら、使ってみたら実はそうでもない事実。
「こうしたら誰でも簡単に使えるだろう」という自分の思い込みや狭い価値観で、ユーザーに使い勝手の悪さを押し付けていないのかどうか。
ユーザビリティ・テストによる問題点の発見と改善において、何が便利で何が不便になりえるのか。ユーザーの質(ターゲット)はどこに設定するのか。あらゆる面からの客観的な視点でユーザインターフェース開発プロセスの中で主観的ではない評価を取り入れていく必要がある。

コメント

  1. 過去記事をユーザビリティー効果に使う

    ある程度ブログを運営していると、だいぶ過去記事がたまってきます。 久しぶりに見直してみると、正直恥ずかしくなるような記事があったりします。 ぜひ、過去記事はもう一度見直して手直しされることをお薦めします。 また、過去記事を手直しする利点はいくつかありま..

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