台湾生まれのスマートスクーター「Gogoro(ゴゴロ)」は時代を走り抜けるか


(C)gogoro.com
台湾のベンチャー企業が立ち上げた「Gogoro(ゴゴロ)」という電動スクーターが要注目。
その昔、とある二輪メーカーに聞いた話なのですが。
その人が自社製品である電動スクーターを試し乗りしたところ、その快適さにベタ惚れ。休日を使って遠い山まで遠征に出かけたそうです。山の坂道だろうが、電動スクーターはスイスイと快適に進む。次世代の移動手段だと気分はハイで大興奮。鼻歌まじりに目的地につき、いざ帰ろうとすると…。


もう想像できると思うのですが、バッテリー切れで動かず。
重い車両を引きずるように歩いて帰ってきたとのことでした。なにその怖い話。
そんな話を聞いてしまった僕としては、かなり電動スクーターというプロダクトに懐疑的だったわけですが。
この Gogoro という製品のアイデアについて脱帽と言うしかありません。
電動駆動の乗り物の最大の問題は、バッテリーを充電するステーションの所在。
充電するための拠点が街中に充分にない限り、いくらエコなスクーターといえども便利に使えないのです。
また、施設があればあったで、充電するまで待っている時間も面倒。スマホの充電さえも面倒くさいのに。
ところがこの Gogoro が採用したのは、目から鱗の「バッテリーレンタル方式」。
充電ステーションには、既に充電されているバッテリー 24個がスロットに挿入済み。
スクーターがやってきてスタンドに停めると、自分のスクーターからバッテリーを取り外す。
そのバッテリーを、充電ステーションのスロットにガチャンと挿入。すると別のスロットから充電済みのバッテリーが飛び出し、そのバッテリーを自分のスクーターにセットするというもの。
この利便性から、台湾では大都市を中心にステーションを100か所以上に設置済み。
半年間で2,500台を売り上げ、発展を続ける二輪市場を考えれば、さらに倍の設置も予想できる。

動画へのリンク:https://youtu.be/2DG8h8fs8Jw
なるほど、確かにこれなら充電時間のわずらわしさもなく、スピーディーでクールです。
繁盛しているステーションでは充電済みバッテリーが足りなくなることもありそうですが、いろんな問題が解決されています。
電動スクーターのデザインというより、バッテリー周りの問題をデザインしたというところが新しいですね。
考えてみれば電動スクーターが普及しなかったのはバッテリーのところなので、ここをまずデザインするべきところだったんですけど。
また、スマートフォンメーカーから独立した人立ち上げた企業ということもあり、スマートフォンの連携が充実。コンピューター部分をスマホ側にさせる形式で、メンテナンス管理やキーのアンロックなども、アプリを利用して行います。
鍵の代わりにスマホを使うイメージですね。個人的に嬉しいのは、昔、原付でよくやってしまった「鍵の差しっぱなし」が激減するんじゃないかと。僕なんか差しっぱなしのカギを警察に回収されて、交番まで取りに行ったことありますからね!!
日本やシリコンバレーではなく、台湾からこういう新しいプロダクトが出てきたというのは驚きを隠せないですが。
4輪車では無く2輪車という分野では、アジアの方が進んでいて得意分野ということなんでしょうね。
ベトナムに行った時には、道路を埋めるようなスクーターの洪水にびっくりしましたが、彼ら彼女らは独特のファッションも考えていて。排気ガス対策でマスクをしているのですが、そのマスクにグラフィックが施されていたり。ヘルメットにもオリジナルのステッカーやマーキングがあります。カスタマイズされていない人を見つけるほうが困難なくらい。
Gogoro にもそういう概念があり、車体のフロント部分はオリジナルデザインができるようなスペースになっています。
大量生産品によってモノが氾濫すれば、自分のモノと他人の境目も曖昧になってしまう。
そこにオリジナルデザインが発生するというのは自然の摂理なのですが、そう考えるとアジアから発信されるデザインというのは、この Gogoro 以上に要注目ともいえますね。
バッテリーユニットをシェアするという新しい発想は、スマートフォンや EV(電気自動車)などにも使えそうなので、これからの進展にしたいところです。
■Gogoro – Introducing the world’s first and only Smartscooter?
http://www.gogoro.com/smartscooter/customize/

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