トイレのピクトグラムって、グラフィックとしての意味を考えると不思議じゃありませんか?
棒立ちの男と、女。
このグラフィックだけからでは、何の意味も伝わってきません。
このシンボルマークがある扉を「トイレ」と認識できるのは、よく訓練された我々人間全員だけですね。
ちなみに実際にはトイレのマークを表しているわけではなく、「男性用」と「女性用」の区別のためのピクトグラムです。
トイレのどちらが男性用か女性用かを表すもので、そこがトイレであるのは暗黙の了解のようになっています。
認知心理学的には、「赤信号=止まれ」と同じもので、その記号がそういうものだと人類全体に長い時間をかけて刷り込まれた結果になります。
ちなみに、男が青、女が赤、と日本では色分けされていますが。
タイに実際に行った時は、男も女も赤色でした。なんでなの、アレ。
なので、終始、ピクトグラムの形を凝視して確認するというのをやらないと、ぱっと見の色だけで判断しないようにしないと大事故になるのでヒヤヒヤでした…。
ワールドワイドに考えると、こういうローカルルールのデザインはなんとかしないとですね。
(タイだけじゃなくて日本もね。色分けなんてユニバーサルデザイン的には無いでしょ)
さらに深く考えると、この棒人間の性別を表すための細部。
なんでこの形で「男」と「女」なのか。
女性を表すピクトグラムは胴体が A型に裾が広がっています。
下衆な話ですが、あんまり女性的な肉体のシンボルを表すものではないですね。
一般的に着用する服の形態を表したもので「スカート」とよく言われますが、たぶん「ドレス」だったような。
現代ではスカートを履く人も少なくなるので、このピクトグラムもリデザインされるべきという意見もちらほら。
なんていうか、スコットランドの民族衣装のキルトが…いやなんでもないです。
多くのデザイナーが問題提起をしています。
■「スカートを履かない」女性用ピクトグラム « WIRED.jp
http://wired.jp/2015/05/30/redesigned-ladies-restroom-icon/
さて、僕が喫茶店などで初めて行ったお店で行う、デザインゲームをご紹介します。
それは、「トイレの場所がすぐ分かるか?」です。
お店には、スタッフに聞かなくてもすんなりトイレの場所が分かるものもあれば、聞いて道順を聞いてもまだ分からないものがあります。すぐ分かる場合はもうつまらないのですが、「分からない」お店がとても楽しい。何故分からないのかの理由をデザイン的な視点で考えます。
飲食店におけるトイレの場所には、必ずセオリーがあります。
例えば、
・食べてる人から見えにくい場所
・窓際にはない
・直接見えないような奥の場所
などなど。
なんでそういうレイアウトなのかは、改めて考えずとも分かるところだと思います。
だからトイレを探す人は、奥へ奥へと進んで行くのではないでしょうか。(※そして時々スタッフ用の厨房とか入っていったり)
トイレの場所が分からない店というのは、そういうセオリーから外れてしまっているんですよね。
なので、なんでセオリーから外れなくてはいけなかったのか、それを考えます。
「セオリーを外さなければいけないほどの重要性を持った要素」ですね。
まぁ、大抵は単なるレイアウト的な問題で、何も考えずにそこにした、とか。
メンテナンスが楽な配置に水回りを集中させたかった、とか。
大体そんなかんじのつまらない大量生産的な理由だったりするんですけど。
それでも、「何故いま自分には分かったのだろう」という心理的な動きを自己分析することは、普段何気なくなんとなく使えてしまう良デザインの理由を紐解く重要な気づきになります。
こういう思考を活かしたインターフェイスとかを提案したいですね。
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