ピクトグラムなどの言葉は市民権を得始めていますが、逆にあまり知られていない単語「アイソタイプ」。
これは将来的にピクトグラムと呼ばれることになる視覚記号の元祖です。
ピクトグラムを真似るのは簡単で、単に言葉や姿形をシンプルにするだけ。
デザイナーにとっても「線が少ない分、簡単」とまで言われることがあります。
形や自己満足などの上っ面な理由で作られ語られることの多いピクトグラム関連ですが、その元祖たるアイソタイプについて、何故生まれたのか、その思想についての把握はできていますでしょうか。
「アイソタイプ(Isotype)」の発案者は、オーストリアの哲学者、オットー・ノイラート(Otto Neurath)。
彼は戦時を生き抜き、満足に教育を受けられなかった大衆などにむけて社会経済の現実を伝えるために、図や記号を用いて表現する方法を発明しました。
「International System Of TYpographic Picture Education」。
その表現方法は、単語の頭文字をとって Isotype(アイソタイプ)と名付けられます。
例えば、海外旅行で問題となる「ぼったくり」。
なぜそのような問題が発生するのかといえば、自分たちが現地の相場を知らずに、正しいのか正しくないのか分からないままお金を払っているからです。
つまり「知ることができない」という不公平。
ノイラートの考えたアイソタイプの基本理念は「非言語による情報の伝達」。
文字が読めなくても、視覚記号の表す図によって複雑な統計データも直観的に分かるようにするものです。歴史的には、これがインフォグラフィックへと続く布石になります。
インフォグラフィックは分かりやすく伝えるために、よりカスタマイズされた独自の絵文字でオリジナル図解による情報伝達を行います。
多くのデザイナーは、自分の考えた独自の絵文字を世界に広め、自分が第一人者であると誇らしげに謳うことを望むでしょう。
しかし、そうやって乱立したできた統一されない絵文字は利用者に混乱を招き、余計に複雑な世界を生んでいきます。
アイソタイプの最も重要な意味は「平等」です。
誰にでも等しく。国境を越え、教育レベルを越え、全ての人にあまねく等しい情報伝達を行うこと。
自分の図柄を広めるのでは決してなく、過去にもっとも使われているアイコンなどを用い、さらにそのアイコンを普及させることもしていくことで、認識を共有していくような概念です。
アイソタイプの概念については、ノイラートの生い立ちや戦後の教育事情、社会事情などを紐解くうちに、その世界をとりまく問題について考えることができるかと思います。
■オットー・ノイラート – Wikipedia
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