来たるべきデザインのキーワード「マテリアル・オネスティ(Material Honesty)」。
工業デザインの教科書的な考え方で、簡単に言えば「デザインは素材に忠実であるべき」という原理です。
物質は模倣した何かになるべきではなく、その物質の本来の姿であるべき。
木材の材質を活かした椅子やテーブルは温かみがあり、アルミニウムでできたパソコンの筐体は堅牢で美しい。
製造工程にも無理がない。そこには無駄な加工が存在しない。
人に対しても優しい。なぜ最初に固い鉄ではなく柔らかい木で椅子を作ろうとしたかを考えれば、納得のいく結果だと思う。
誰が、冷たいコンクリートでできた椅子に長時間座りたいと思うのだろう。
WEBデザインにコーディングが不可欠のように、インダストリアルデザインには材質というデザインが不可欠だといえます。
オネスティの概念は、実は WEB にはありません。
画面の中のデジタルデータを作っている WEB の世界には、そもそも最初からリアルの模倣品しかないのです。
では、WEB の美学とは、どういうものが考えられるでしょう?
WEBが本やテレビと同じようなメディア媒体だと考えれば、特別なインプリメントはリアルタイム性。
購入しようとした商品に在庫があるかどうかを表示時にデータベースに問い合わせ、その在庫状況結果を表示することなどが可能です。
インプットとアウトプット。そしてレスポンス。
本やテレビには無い、画面の向こう側との対話。
画面に特化した操作と、画面設計の UI が、模倣品ではない WEB としての表現技術だと言えます。
俗に言う「WEBデザイン」ではない、装飾をそぎ落とすような本質的なデザイン。
シンプリシティ(Simplicity)という言葉が当てはまると思うのですが、簡単・質素にするという意味ではなく、無駄がなく実用的であり魅力的であるということ。
クリエイターのことを、よく「 0 を 1にする仕事」と言うと思うのですが。
デザイナーは、「100 を 1 にする仕事」。
「足し算」としてのクリエイティブと、「引き算」のデザインが必要になります。
引き算という概念を説明すると、いろんな複雑で分かりにくいことを、分かりやすく簡潔にすること。
複雑な問題に、解決策を提示すること。
WEBデザインがデザインの言葉を冠しながらも「デザイン」となかなか認められない背景には、携わる人たちが安直なビジュアル面の模倣品を量産してしまっていることが問題だと感じています。
WEB としての美学をつきつめた、「エレガントな」成果物を造ることができるようにしたいですね。
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