安全に故障できるデザイン


工廠施設内の開発室にぽつんと置かれていた、赤いボタンユニット。
風情があったので、思わず写真に撮ってしまった。
人はなぜ、こんなにも赤いボタンに心を奪われるのだろう。


プロダクトデザインの世界では赤いボタンは緊急停止ボタン、とにかく生命を救うものです。
ユーザビリティーの定義には「安全に故障しろ」という指標があるのですが、壊れるなり人がなにかしらの事故にまきこまれた際に、安全に機械を止めるためのボタンのメタファになっています。
とにかくこれを押すことで、電源をカットし危険な動力を停止させ、安全を確保するのです。
このボタンは「押しやすい」ようになっていないといけません。
間違って押してしまわないようにカバーが付いていたりロックが付いていたりすることは稀で、とにかく「押すことが可能」となっています。パニック状態でも押せるようにしてあります。
緊急停止ボタンではそうなのですが、「そのボタンは押してはいけない」というお約束の話では必ず誰かが押してしまいます。
有名な実験では、Reddit で行われたものがあります。インターネット上に60秒から0へとカウントダウンしているタイマーがあるのですが、傍らには画像ボタンが配置されており、それを押すとカウントダウンがリセットされ60からまた始まるというものです。
ブラウザで開いた誰かがボタンさえ押さなければすぐにゼロに到達するはずなのですが、実際にゼロへと到達できたのは数か月後でした。
■the button(英語)
https://www.reddit.com/r/thebutton/
このような人間の行動には特に心理学的な名前があったりするわけではないのですが。
「押さないことでストレスを感じてしまうから」というのが定説となっています。
押したことでどういう結果が得られるのか、その体験をしたくてうずうずしてしまうというわけです。
デザイン的には「押せそう」というアフォーダンスですね。

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