工業デザインといえばドイツ、世界的な展示会も開催されている通り、世界基準の発信地ともいえます。
バウハウスが最も有名ですが、現代アートに影響を与えたのが Kurt Schwitters(クルト・シュヴィッタース)。
上の画像の「メルツ絵画」の創始者です。
■クルト・シュヴィッタース – Wikipedia
メルツ絵画は廃棄物やそのへんにある普遍的な素材を組みあわせて作るコラージュ作品。広告やら新聞、針金などあらゆる物を使って形成されます。
なぜ「メルツ」と名付けられた表現技法なのかは、Wikipedia にも詳しく掲載されています。
彼が目をとめた紙の破片に書かれていた「メルツ」の文字(「Commerz Und Privatbank」という銀行名のうちの「merz」の部分)から、彼はこの作品に『メルツ絵画』(Das Merzbild)と題を付けた。
シュヴィッタースは乱雑な点が線となるように、断片的な言葉が組み合わさり文章になるように、ガラクタのような素材がコラージュされ1つの意味となるように考えていたようです。結果、境界線のない芸術を作ったのですね。そのための意味のない単語が「メルツ」です。
インダストリアルデザインには、総合的なデザインには「マテリアル」という要素が必ず必要になります。
それは肌に触れる快適性であったり、耐久性であったり、使いやすさであったり、何よりも価格という数字が付いて回ります。
メルツにはマテリアルなどどうでもよい、ただ街頭で目についたものを使うというスタンスがあり、実際にシュヴィッタース自身が自宅を改装したメルツバウという建築デザインもあります。
使用されたマテリアルは、かっては意味を持ったデザインでした。
当時の「現在」を大衆に広めるための新聞。
希望に満ち溢れた広告チラシ。
誰かが愛用した何かの部品。
誰も見向きもしない、どこにでもある普遍的な自然物。
普通ならそのメッセージ性を再利用するところを、エモーションを破壊しただのマテリアルとする。なぜならマテリアルは重要ではないから。
全てを等価値にし、尚且つひとつの絵画として落とし込む。それがメルツの真髄なのだと思います。
新しいモノを作ろうとした時、そのボディは新品のものが使われるでしょう。
逆にいえば、新しいモノに既存のマテリアルが使われることがありえない。
完成図をイメージし、そこに辿り着くための欲求がエモであり、そこに使われた素材はなんでもよい。
どこか、哲学や経営にも似た達観さがあるのだけれど、あらゆる文脈を考えられるところにメルツというデザインの面白さがありますね。
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