制作契約を結んだ顧客様の要望は、お金をもらって仕事をするわけですので、実行するのが当然です。
僕は全力で実行します!
ただ過去には、要望内容に対して僕から少しの提案がある場合や、経験に基づく方法論があるのに、それらを一切シャットダウンし一方的に「これでやれ」と言われてしまうような、残念な仕事もあります。
最初に信頼関係を築けなかったという点で、完全に僕のミスですが。
多くの企業は自社製品について、ユーザー様から、よく「こんな機能が欲しい(こんなデザインに)」という要望を多く受けていることでしょう。
消費者のニーズに応じることは、需要から製品を生み出すという点で非常に重要で多くの利点があるのですが、個人的な意見になってしまいますが多くの場合、ユーザー様の意見は大抵そのままでは使えません。
マーケティングの専門家でもなければ経験を積んだベテランでもない一般ユーザーなら、尚更です。
例えば、どうしても欲しくなって気に入って買い物をした製品を「やっぱり使わないや」と倉庫の奥に眠らせてしまうことはないでしょうか。
或いは、「どうせ買うなら左ハンドルの外車がかっこいいよね!」とばかりに買おうとした外車を「左ハンドル乗りづらい・・・パーキングチケット取り辛いし」と想像しなかったことは?
人間というものは、それぐらい自分自身の心理行動について正確な情報を得ることができません。
実際に直接ユーザーに「このサイト上に欲しい機能は何ですか?」と尋ね、「○○機能があれば便利だと思いますね」と得られた回答は、本当のニーズでないことがほとんどです。
これは、回答したユーザーが『自分のニーズ』ではなく、意見を求められたことで「自分が専門家になったつもりで『みんなが欲しいと思うであろう機能』を想像して答えている」という心理も影響しています。自分の意見を正当化し、それによって高い評価を得たい。人間は誰しも自分を過大評価するものですから。
実際に「ユーザビリティ向上」をキーワードに、ユーザーニーズを検証してみましょう。
下の画像は、少し古い成果物ですが、5~6年前に作った問い合わせフォームです。
このフォームをスケープゴートに、ユーザビリティ的に駄目な部分を、いわゆる「問題点」と「必要な機能」を考えてみてください。
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どんな問題点があげられたでしょうか。
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あんまり多すぎると、僕が泣きます。
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まぁ、そこは深く反省するところですが、追加して欲しい機能に「郵便番号を入力してボタンを押すと、自動で住所が検索されてフォームに入力される」という機能を多くあげるひとが多いです。
これは便利ですね!
ぜひ全部の住所を入力するフォームに実装してほしいです!
ですが・・・。
一見素晴らしい改良点ですが、実はそうでもありません。
この機能の有無に関わらず、ユーザーはフォームに必要事項を入力して送信するからです。
あれば便利な機能ですが、
「自動入力機能が無いから、もう入力するの止めた!」
──というユーザーはほとんどいないと思います。
お問い合わせを目的とするこのコンテンツにおいて、目的を完結するのに、この機能はほとんど必要無いといえます。
「あれば便利な機能」と「必要不可欠な機能」。
リッチとニーズ、この2つを区別することはユーザビリティを考える上では非常に重要な点であると考えます。
※ちなみに住所検索を実装するには、システムの人間に言わせると「合併などで更新される住所データに対応するように、定期的なメンテナンスが必要」とのことで、けっこうなお値段とランニングコスト、人件費がかかるようです。
ところで、本当に「自動入力機能が無いから、もう入力するの止めた!」という人が多かった場合。
もしくは、要望が多い場合。
高いコストをかけて機能を追加するべきなのでしょうか。
それとも無視するべきなのでしょうか。
僕の考えるユーザビリティと、ユーザーニーズへの対応とは、
(A)「自動入力が欲しい」 → ユーザーは入力を面倒くさいと感じている? → 入力する項目が多くて面倒くさいのだろうか。最低限必要な入力項目に減らしてみよう。
※メールアドレスを絶対値として取得しておけば、後日、削った入力項目内容をアンケートという形で収集することができるかもしれません(返答率は落ちるでしょうが)。
(B)項目は絶対に削れない。ならば、まだ元気のある最初の方に入力させ、ラジオボタンのように集中力が落ちても気軽に選択できるものを後回しにしよう。
このように、「要望」を解釈・分析し、再設計・修正を行います。
要望は真摯に受け止め、絶対に無駄にはしませんが、「そのままでは使いません」。
ユーザビリティに答えはありませんので、少しでも気分よく使えるデザイン(インターフェイス)にすることができれば良いのですが。
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