『一番好きな映画は何か?』
という問いに対しては、斬新で格好良いアクションに衝撃を受けた「リベリオン」と、もうひとつラストシーンに生涯唯一感動で鳥肌が立ち涙腺が壊れる経験をした「ニュー・シネマ・パラダイス」を挙げています。
両方とも、映画に詳しくない人にはあんまり知られてないようで怪訝な顔をされるのですが、確かニューシネマパラダイスの方はアカデミー賞を総ナメにしたような記憶があります(日本ではあまりヒットしなかったような)。
映画の中で、老映画技師アルフレードが幼い主人公トトに語る物語があります。
昔、ある王様がパーティを開いた。
国中の美しい女性が集まった。
護衛の兵士が王女が通るのを見た。
王女が一番美しかった。
あまりの美しさに、兵士は恋に落ちた。
だが、王女と兵士ではどうしようもない。身分が違いすぎる。
でもある日、ついに兵士は王女に話しかけた。
王女なしでは生きていけないと言った。
王女は彼の深い思いに驚いた。
そして言った。
『100日間の間、昼も夜も
私のバルコニーの下で待っていてくれたら
あなたのものになります』
・・・と。
兵士はすぐにバルコニーの下に飛んでいった。
2日……、10日、20日たった。
毎晩、王女は窓から見たが、兵士は動かない。
雨の日も風の日も、雪が降っても、鳥が糞をし、蜂が刺しても、兵士は動かなかった。
90日がすぎた頃には
兵士はひからびて、まっ白になっていた。
眼から涙が滴りおちた。
涙をおさえる力もなかった。
眠る気力すらなかった。
王女はずっと見守っていた。
99日目の夜、兵士は立ちあがった。
椅子を持って 行ってしまった。
最後の日に。
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アルフレードがここまで話したのを聞いて、
トトが意外な顔をして訊ねる。
「最後の日に?」
「最後の日にだ」と言ってアルフレードが締めくくる。
「話の意味はわからない。わかったら教えてくれ」
非常に不思議で、何の脈絡も意味も分からない譫言のような寓話。
「兵士は、なぜ最後の日に立ち去ったのか?」
その答えは、話をした老映画技師自身も、分からない教えてくれ、と言うのです。
僕は、この「王女と兵士」の話を他人に話して、意見を聞くのが好きです。
人によって捉え方が違うこの話で、その人なりの個性のようなものが見えてくるからです。
好みの異性がそれぞれ違うように、人には自分なりの「美」へのアプローチがあり、万人に評価される絶対的に優れたデザインというものがありません。
自分の好みであるTVタレントの魅力を力説してみたとき、相手が全く同調せずに興味を示さないという経験が誰にでもあるように。
デザインというものは、それくらい不愉快で、乱雑です。
顧客の好みに近づき、ミロのビーナスのような共通の美意識に近づく。
良い意味でセカンド・オピニオンの無い、明暗も混乱もない世界。
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