デザイナーとして、物語を読み取る


よくデザインについて説明してほしい、と先方に言われ困ったことないでしょうか。
それが数分で作ったものだったり、特に設計企画をしたものでなければなおさらです。
「何故、ここに、この色を使ったのですか?」
先方にとっては自分が気に入ったものを深く知りたいという欲求だと思うのですが、深く考えずに鼻歌交じりで楽しく作れたものなのでは、成果物に至る道程など覚えていないので余計わかりません。
デザイナーに関わらずアウトプットを生業とする人には「言語化」という能力も必要になり、意匠のままではなく言葉に変換して顕現させることも必要なのですが、駆け出しの頃はボキャブラリーも引き出しも少ないこともあり、なかなか難しいものです。
よく後付けのような「説明」を目にすることも多いのですが、大抵はこの言語化に難があり後からもっともらしい説明を付け加えているからだと思います。


「言語化」はブランド戦略でのデザイン統制や、部下に仕事を教えていくために必要なので最終的には身につけていくしかないのですが、おそらく活字を読むなどしてシソーラスを把握しない限り不可能で、日常生活しているだけでは身に付かないかと思います。新聞のように異分野な情報が多いものが風呂敷が広がり効果的なんじゃないかと経験上は思います。
また、アウトプットするためには情報をインプットする方式にもポイントがあると思っています。
情報をナラティブ化 ━━ 物語のように読み取っていくというものです。
要は、より情緒的に、感情に訴えるモノの言い方をすることで、相手に刺さる言葉として残せます。
それには、論理的ではない別の捉え方、もっと感情的・直感的なインプットが必要で、これはできる人とできない人がいるようです。
できれば優れているということでもなく、おそらくそれは論理的思考がしっかりしている人ということなんでしょうが。
ナラティブ、エクスペリエンス、エモーションなどと、人間の心の揺さぶりを促すデザイン手法を果たして自分が生み出し作り出せるかは、自分がこのような捉え方ができるかが鍵となります。
そして、WHITE JAM というアーティストの Valentine という曲のミュージックビデオが試金石の教材として秀逸です。
論理的思考だと物語が見えないのだそうです。「意味が分からなかった」と言う人もいます。
僕も何人かに、この MV を観せた後にどういうストーリーだったかを説明してもらうと、びっくりするくらい多種多様なものが返ってきて驚きました。
構成自体がいろんな捉え方ができるように工夫され、そして正解がないようにしているせいでもあるのですが。
同じような考え方をする仲間を見つけることのできるツールになるかもしれません。
自分の感性や相手の感性を知る動画として、ぜひお試しあれ。

この動画のリンク:https://youtu.be/_o3lc3qz5kc

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