スキュオモーフィック・デザイン


スキュオモーフィック・デザイン(Skeuomorphic Design)。
Apple の iPhone に見られる UI のことです。
Windows 8 のメトロ UI(Metro UI)に相反するデザインとして、最近では酷評されています。
「Skeuomorphic」とは、ギリシャ語で「容器」「形」といった意味。
要は、現実世界の事象や物を模倣したデザインとなっています。


Apple の基本的なデザインは、すべてこのスキュオモーフィック・デザイン。
PCの画面を「デスクトップ(机の上)」として、電卓やメモ帳といった現実の文房具などに見立てたアプリケーションと、その意匠をもとにしたアイコンを並べるのもこの考え方。
スクリーンショットを撮るのにカメラのシャッター音がするのもこの考え方。
この手法は、新しいインターフェイスを提供する時には役立ちます。
電話はダイヤルやテンキーで操作するという概念を打ち破った iPhone は、タッチパネルで操作するというエクスペリエンスを初めて世の中に普及させました。
この普及の背景には、スキュオモーフィック・デザインという「現実世界のコピー」、操作が簡単に覚えられたという UI の貢献度が大きいです。
それに比べ、メトロ UI の酷さ。どこがボタンなのかさっぱり分からないフラットなデザイン。
こちらが最初に出ていたら、iPhone はこんなにも売れなかったのだと思います。
しかし現実には、後発の メトロ UI が勝利者とされ、正義とされ、持て囃されています。
あまりにも使いやすく、あまりにも早く自分の生活と溶け込んでしまったがために慣れてしまい、普遍的で簡単すぎる「つまらない UI」とされる、レトロな iPhone の UI。
デザインにはトレンドがついて回るものですが、技術だけでなくデザインも後発に負けるもの。
iPhone という時代を変えたプロダクトは、そんな警笛をデザイナーにも与えてくれます。
さて、スキュオモーフィック・デザインの「罪」はそんなことではなく、ある職種を甘えさせてしまうことにもあります。
現実世界のデザインをコピーするような仕事がもてはやされるなら、デザイナーはどうすればいいでしょう?
メトロ UI は、あらゆるチャレンジをデザイナーに与えます。
タイポグラフィをベースとした情報デザインである、このモダンな UI は、現実世界の余計な情報がそぎ落とされていて、装飾や効果を作ってきたグラフィッカーには作るのが難しい。
そこにあるのは理論と洗練さ。そして消費者に対する親切心。
流行が巡るように、メトロ UI は将来、数年後に出てきたリッチな UI と比較されることになり、「シンプルで無機質、ダサいデザイン」と酷評されるようになってしまうと思います。
しかし、デザイントレンドとしてではなく、デザインマナーとしての メトロ UI を解析し把握することで、その有用性や機能性に気付くとこができると考えます。

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