僕はこの季節でも、家ではTシャツに短パン。
高気密高断熱住宅と床暖房の恩恵です。
なので最近の冬って暖かいなと勘違いしていたくらいで、他所にいくと改めて「こんな寒いんだ」と気づかされる感覚があります。
よく「高気密高断熱住宅は暖かいのか?」と聞かれることもあるのですが、暖かいわけでもなく涼しいわけでもなく正確に表現するならば寒くも暑くもないです。普通に1年中Tシャツに短パンで、雨が降ろうが雪が降ろうが、家の中は1日中静寂のそのままです。
究極の住みやすさというのは、概念ごと空気のように当たり前のようにそこにあり普段は恩恵にも気づかないものなのだと思います。
さて、住宅デザインといえば安藤忠雄。
日本でも最も雄勁な建築家で、建築を学んでいなくても興味がなくても、とりあえず名前を知っているほど有名な人です。
代表作はいくつかあるのですが、「初期の代表作」として必ずあげられるのが題して『住吉の長屋(すみよしのながや)』。
コンセプト住宅でもモデルハウスでもなんでもなく、普通に個人が現在でも居住している個人住宅の建築物です。
■住吉の長屋 – Wikipedia
個人が有名住宅デザイナーの設計した家に住むなんて羨ましい、と普通に思いますね。
狭い敷地でもプライベートを確立させるため路地側には窓などがなく、住宅を分断し真ん中に作られた中庭側に採光窓を集約したという設計。採光と他人の視線からの遮断を両立させた設計として評価され──といいたいところですが、そうでもなくて。
中庭には採光のため屋根が無く、ベッドルームや居間からトイレに行くのに、雨が降っていようが一旦中庭に出て傘を差すという、造りになっています。
また打ちっぱなしコンクリートの構造で、クーラーを設置する穴もあけられず、猛烈に暑く寒いらしいです。暮らしづらい……。
外観や間取りを知らない人には、下記に説明もあります。
■住吉の長屋 写真一覧/安藤忠雄
http://www.hetgallery.com/row-house_sumiyoshi.html
雨に濡れ、寒く、手すりのない階段を上下し、それ自体は耽美でもない。
そもそも住宅という概念に必須な「屋根」が無いというのは破綻している。
デザインを形作る概念とは真逆の論理なのだけれど、これが本来の人間のライフデザインといえなくもない。
安藤忠雄の住宅設計には時に「設計者の押し付け」のようなものも見え、限られた予算や狭い敷地という厳しい条件の中で何を実現させるかという戦いも垣間見えます。不思議に「悩み」のようなものは感じられないというのも面白いですね。
果たして生活の快適さや、生活の豊かさというキーワードの正体はなんなんだろうと、考えさせられます。
生活しやすい=豊かさ=幸せなのだろうかと。
Wikipedia に施主の言葉らしきものが書かれています。
光庭を中心として四季の移ろいを肌で感じ、ときに恨めしく、心踊らされ、あるときは格闘を強いられ、あるいは諦めたこともある。生きることに飽きるということがなかった。剥き出しの光庭が安易な利便性を排除することで不便と引き換えに天まで届くような精神的な大黒柱をもらった(建築35年後の2011年に)。
いろいろ問題あるようだけど、これは人に話せる事件で、苦労話で笑い話。
そう、人生の話だ。
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