巷で「カッター」といえば、あのカッターナイフなのですが、発明したのは日本人というのは有名な話。
もともとナイフなどの刃は使っているうちに切れ味が悪くなってくるのは物理的にしょうがないのですが、紙を切るナイフは「切っ先しか使っていない」のにも関わらず研ぐ必要があるというのは、少しおかしな話。
この問題に着目した起業家が、折れてはいけない刃を「折ることで新しい切っ先にする」というアイデアを出したのは奇抜な発想というよりは、問題解決能力の結果だったように思います。
刃物の刃をわざと折って使うなど、誰が考えたのか。
このカッターナイフを作ったのは、岡田良男氏という日本人で、社名の「オルファ」は「折る刃」という意味からきているそう。しかも社名のアルファベットを「HA」ではなく「FA」にしたのは、「H」を発音しない国があるからという理由にも、当初から世界を視野に入れていたこと、そして実際に世界標準になってしまったという凄さがありますね。
オルファのカッターナイフのプロトタイプは、意外にもプロダクトデザイナーが作ったものではなく、岡田氏のアイデアを実現したものだそうです。
販売戦略には親族にデザイナーがいたことで、やりたい放題にできたことも成功の要因のようですね。
デザイン的には目を見張るような、完成形に近いものがみてとれます。
折れやすく、折れることが見た目にも分かる切れ目の入った刃。
スライドするというギミックを搭載することで、使用する切っ先以外の刃をセーフティーに格納。
普段は刃が出ないように格納するし、折れやすい刃を保護する役目も。
本体の色は、工具箱・文具箱の中にあっても目立つ黄色で、一貫してこのカラーを貫いている。黄色ならオルファのカッターナイフというイメージが浸透している。
素晴らしい。
ひとつひとつに理由があるデザイン。
机上で設計しているだけでは分からない、自分が使用者であることを前提に、使用者目線で設計されたひとつの成果物になっているのだと思う。
もうひとつ、オルファという企業には職人気質なところがあって、全ての材料を国内で生産しているそう。
そして何よりすごいところは、「替え刃」のサイズフォーマットを世界規模で標準化してしまったところ。
あまりにも素早い輸出戦略で市場をオルファが席巻してしまい、後発メーカーが既に市場に出回ってしまっているオルファとの互換性を考えるしかなかったという。
小さな「カッターナイフ」という、机の上に1本置かれるだけの道具が、これほどに世界に浸透していくという成功例はなかなかない。
オルファという企業は、Apple などよりも評価されていいはずの、イノベーションを先駆けた「開発型のメーカー」だった。
後追いするのではなく、常に先を行き市場を自ら開拓していく、メーカーらしいメーカー。純粋に研ぎ澄まされたようなスタートアップ。
日本には良い企業がたくさんありますね。
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