世界で最も黒い黒をめぐるデザイナー達の闘争


ベンタブラック(Vantablack)という塗料は世界で最も黒い「黒」。
黒色の塗料というのは、光を完全に反射しないわけではないので良く見ると真っ黒にならないのですが、このベンタブラックはカーボンナノチューブという新素材を使い、光を反射せず飲み込んでしまうという性質を持っています。人間の目というのは、光を網膜に写してそれを見るというシステムなのですが、ベンタブラックは光を?み込んでしまうので、色を見ることはできず、そのため「闇のように見えている」もしくは「見ることができない」という状態にあると想像できます。


グラフィッカーにとっては「黒すぎる黒」が一体何の役に立つのかという気持ちになると思うのですが、工学系なら反応は全然違います。例えば望遠鏡の分野に応用されれば細かな星の光を捉えるものが作れたり。
最近では BMW がこれに似た素材を使った黒塗りの車を発表したり、オリンピックの建造物で使われたりと、可能性を広げている。
もちろんアートにも転用されています。
光を吸収するという事は立体の凹凸を認識できず、ベンタブラックで塗装された立像はまるで二次元の影のように見え、不思議な芸術となっています。
ポルトガルの美術館では床に掘った穴にベンタブラックを塗装し、これが穴なのか塗っただけのものなのか識別できないという展示があり、近づきすぎた男性が穴に落ち怪我をするという事件まで発生しています。

この動画へのリンク:https://youtu.be/ZspShE8HwQ8
いろいろアイデア次第で面白そうなことができそうなベンタブラックですが、そこに目を付けた欲深い人間たちが紛争を起こしています。芸術家のアニッシュ・カプーアはベンタブラックをアート分野で独占使用する権利を購入。他のアーティストを締め出してしまいました。
■真っ黒すぎる塗料で脳がバグる :: デイリーポータルZ
https://dailyportalz.jp/kiji/kokushoku_musou-brain-bug
ベンタブラック -Wikipedia
これらのケンカを見てると引くレベルなのですが、こういう新素材を使ってどのようにデザインするかを考えるのは、楽しいですね。
僕は天井に塗って豆電球をつけて星空を作りたい。
  

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