美しくも残酷な現実、プロスペクト理論


売れる商品のデザインには多種多様のクリエイティブがあるものですが、その多くは感覚的であり、情緒的です。
機能的なものは、ほとんど語られません。
これは「気づく」という能力が欠落しているので、人が良いと思ったものを良いとする流行性の要素が強いからだと思うのですが。
その中で結果を求めるクリエイティブに盛り込むべき「ベネフィット」については、多く語られていると思うのですが。
ベネフィットもあれば、人間のリスク回避を刺激するような手法もあります。
例えば、「今日だけ特別価格」とかの手法。
今日を逃してしまえば、という危機感は、それだけ背中を押すのに充分な理由になります。
このへんはチラシなんかかでもよく見る手法ですね。


心理学的には、「プロスペクト理論」と言います。
ちなみにこの理論、「ノーベル経済学賞」も受賞しているのですが、考え方が数学的かつ理論的で少し分かりづらいためか、あんまり世の中には浸透していない気がします。
プロスペクト理論については、Wikipedia などが正確で詳しいと思います。
プロスペクト理論 – Wikipedia
この理論は、数学を使ったアプローチでの、人の意思決定モデル。
Wiki やいろんなサイトで様々な形で説明されているのですが、
要は、得をするという幸福度の場合はリスクの確立を高く見積もり、損をするという不幸度は低く見積もり傾向があるということです。
クイズ番組などでも、次のステージに進んでさらに賞金をGETできる、という場面でリタイアしてしまう人とか多いですよね。
はやい話が、人間はとにかくリスクを回避しようと考えるのですが、そもそもリスクのある状況の場合さらにハイリスクをおかして危機状況を脱出しようとするということです。
このへんは人間の本質に近くて、非常に興味深いところ。
人間の奥底にある基準はてんでバラバラなはずなのに、基準の大小にかかわらず、意思決定の場面ではみんな同じ方向を向くという。
様々なモデルケースから数学的に立証され、確立という未来を疑いようのない現実世界を表現するという、美しい公式。
デザインの力で売るという場合、覚えておいた方がいい理屈です。

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