パントン・チェア

パントン・チェア
後ろ足のない、なめらかな材質で一体成型の椅子。
倒れそうで、それでいて丈夫そうで。
美しいカーブを描く姿は、どことなく貴婦人のスカートのようでもある。
これは、パントン・チェアと呼ばれる椅子です。
有機的なデザインを数多く手がけたデンマークのデザイナー、ヴァーナー・パントン(Verner Panton)の代表作として知られるこの椅子は、スタックができるという実用性を兼ね備え、ポップな原色と光沢感、3次曲線・一脚の斬新なデザイン、新素材使用。思いつくだけでもお腹いっぱいの要素満載で、当時、一大センセーションを引き起こしたそうです。
1960年にデザインされたものですが、当時の北欧マニファクチュアは木製の家具が主流で、パントンのようにプラスチックなどを使用する発想はありませんでした。木ではなくプラスチックという材質を使用したことで強度を確保することができ、なおかつ「支える足がない」という奇抜なデザインを完成させることができたのです。背景には材質の飛躍的な成型技術の発展もあります。
このデザインを見るたびに、世界をひっくるめた技術の発達というか、人間の進歩というか、飽くなき追求というか、そういう”一人では無いデザイン”の力のようなものを感じるのです。
時代的には、確かにマス・プロダクツが頭をもたげ、家具もそれまでの職人によるオーダーメイドという形から工業製品へと移行していく転換点でもあったわけだけど。マスターピースとして確立され、庶民のパーマネントコレクションにもなりえる名作になりえたのは、広い視野があってのこそだと思うわけです。
現在のパントン・チェアではFRP素材が使用されているように、パントン・チェアは時代の推移とともに新素材の発達・技術進歩で、さらに進化していく椅子になっています。
独特のフォルムと、その時代を象徴する優れた素材を使用するというコンセプトとアイデア。
パントン・チェアは時代とともに生まれ変わり受け継がれていく椅子なのです。
10年後、100年後にパントン・チェアがどんな素材で作られているかは誰も分からないわけで。
そんなわけで、今という時代を感じるこの椅子を楽しむのも面白いと思うのです。
石川尚の一家一脚・椅子物語UP#016 殻をやぶったピュアーな椅子
Verner Panton Design 公式サイト?
 
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