ロゴの形を決めないという選択。現代の柔軟なアイデンティティの探求


ニューヨークのホイットニー美術館(Whitney Museum of American Art)のロゴの話。
このデザインは、世界で的にも有名なオランダのデザインチーム「エクスペリメンタル・ジェットセット(Experimental Jetset)がデザインしたもの。
このロゴ、Whitney の「W」をデザインしたものなのですが、正直、かなり単調で普通というイメージでしかないでしょうか。細い線と Neue Haas Grotesk という当たり前のタイポだけで、かなり退屈です。
このロゴが注目される理由は、有名なデザイナーが手掛けたということもあるのですが、もうひとつの理由が「変形しても OK」というルールです。


普通、ロゴは認知度を高めるために変形や色を変えるなど手を加えることはご法度。厳しく管理され、CI としてルール付けされているものです。
もしこれが自由に色を変えたり勝手に変更されたりしたら、見る人ごとにイメージが変わり、統一したデザインとして構築できなくなるからです。
しかし、このロゴは、周囲のテキストやレイアウトに合わせて「W」のギザギザを変形するのが可能というシステムをとっています。
公式サイトにアクセスしても、スクロールで変形しているしページによってロゴデザインが変わっているのが分かります。
■Home | Whitney Museum of American Art
http://whitney.org/
“responsive W”と呼ばれるこのシステム。
ロゴは規格化された静的で単一のグラフィックではなく、ルールに定められているのはアイデンティティーの方という考え方で、アイデンティティの許す限り形状を変えて変化できるという概念です。

周囲に合わせていくらでも変形するのですが、シンプルな要素だけに基盤となるところがブレずにコンセプトとして残る形にはなっているんですよね。単純図形なギザギザだからこそ可能なシステムとだと、なるほどと思いました。
「自分たちは柔軟だ」「変化する」とするアイデンティティ。
時代の変化に従って変わっていく自分たちを表現するためのロゴシステム。
決められた枠に収まらない、単一の形では表現することが難しいブランドを持てば、こういう形になるのでしょうか。視覚的なビジュアルに目を向けがちですが、魅力的で大胆な発想というのも必要だなと感じました。

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