WEB制作をするツールとしては、現状プロが使っているのは、Adobe の WEBオーサリングツールである Dreamweaver が一番シェアがあると思います。実際、僕の周りもみんな Dw。
最近の若い人は、Sublime や Atom で制作するという人も増えていると聞いたことがありますが…。
で、作ったファイルを本番サーバーに転送するために必要な FTP(File Transfer Protocol)。
サーバー側に用意されているのが FTPd、いわゆるFTPサーバ―。
そして WEB 屋さんが使うアプリが、FTPクライアントと呼ばれるツールです。通常「FTP」というと、こちらのクライアントソフトを指します。
大体、Windowsの人なら「FFFTP」、Mac の人なら「Cyberduck」、ネットワークに強く SSH が理解できている人なら「WinSCP」というソフトウェアが馴染み深いのではないでしょうか。
初心者に FTP の説明をしていたら、自分でも気づきもしない質問をされたことがあり、それが、
「何故、Dreamweaver の FTP機能を使わないのか?」という内容でした。
昔から WEB制作をしている人なら「は? お前なに言ってるの?」というところですが、よくよく考えたら昔の苦労を知らない人にしてみたら、なぜ、わざわざ別の FTPクライアントを使わなくてはいけないのかというところが、そもそも不思議なんだと思います。
歴史の当事者である自分たちにとっては、流れの中で自然にそうなっているので当たり前すぎて疑問にすら思わなかったというか。
他人に教えるということは、自分の中でも発見になりますね!
なぜ Dreamweaver の FTP 機能を使わなかったか
いきなり核心ですが…。Dreamweavr の FTP機能は、かなりの高機能です。制作して保存すると、保存したものをそのまますぐにデモサーバにアップロードしてくれるため、時間の無駄なく最新の状態をテストすることができるようになっています。
この機能がないと、何ページもあるサイトだったり重い画像を大量に使っているサイトだったりすると転送に時間がかかるわで非常に不便です。この機能は本当に制作の時間の短縮になります。
──と、開発したメーカー側は想像して、してやったりと思うはずなのですが、実際に使う僕らの感想は違います。
正直いってこの機能、便利だと思うし作業も捗ると思うのはメーカー側の考えで、実際には「使えない」です。
たくさんあるファイルが勝手に転送されるのはいいのですが、本当に転送されたのか?
さっき保存したファイルは間違いなく転送されたのか?
このファイルは最新なのか? サーバの方が最新じゃないのか?
こんな感じに、自動化されるぶん、自分の把握できないところが多すぎて、はっきりいって制作に不安がつきまといます。
目視で確認できるか、もしくは正しく転送されたことがフィードバックされる UI じゃない限り、恐ろしくてクライアントに納品できないのです。
確実に更新されるのならこんな不安がないのですが、当時の Dreamweaver は FTP機能が不安定で、更新されていなかったりが多く、不確実すぎて使用を敬遠し、別の FTPクライアントを使うという流れになっていというのが、現在の Dreamweaver の FTP機能が使われなくなった原因です。
なんというか、メーカー側も高機能に走るのではなく、もう少しお客様目線での開発ができていれば、もっと便利に Dw が統括オーサリングツールとして強固な立場を築けていたはずなのですが…。
あと、この差分アップデート機能を知らずに、わざわざ URL の付いた環境をローカルに構築してしまっている人は、まずこういう仕事の仕方を覚えなさい。
FTP と WEB屋さんの昔と現在
そんなことから、アップするサーバとパスとタイムスタンプを確認して上書き…というのが WEB 屋さんの正しい仕事の作法なのですが。そんなマナーもチームで仕事すると複数人による上書き合戦でファイルの最新状態が保てないという状況にもよくなったものです。Dreamweaver にはチェックイン機能もあるので、チームでの制作にも使えるのですが、ここでも前述の不安定さがり、やっぱり FTP機能は使われませんでした。
最初によく使われていたのは「WS_FTP」というソフト。
シンプルで高速、計量だけどやりたいことは全部できるというソフトの上に、Windows にしては珍しくレジストリを使わないので、設定ごとフロッピーディスクに入れて持ち歩くことができ、外出先でも重宝しました。
これ、シンプルなぶんメチャクチャ使いやすくて僕の人生のベストソフトランキングに必ず入ります。
その後、「WEBデザイナー」が花形職業として乱立することになるのですが、大量発生とレベルの低下により、その時に日本語版の存在しない「WS_FTP」は使いづらいという烙印を押されて消えていきます。
そして日本語環境が揃っている FTPクライアントである「FFFTP」などにシェアが移っていきました。
また、ホスティングサービス側もSSL通信などに力が入り、対応していないクライアントが捨てられていくという結果に。
FTP情報を扱う恐怖
記憶に新しいのは、かなりのシェアを持つ「FFFTP」を狙ったウイルス。
インターネットのアンダーグラウンドやエロがファイル共有ソフトの悪用などにより当たり前の文化として拡散されてしまい、悪意の進入路がメールだけでなくなった頃、FFFTPの設定ファイルを狙ったウイルスが流行し、それが勝手にウイルスをサーバにアップして拡散させるというものだったためWEB屋さんがいつか自分もそうなるのかとガクブル状態だった時代もあり。
FFFTPが開発終了になったこともあり、それからはまた「これ」といったFTPクライアントがない時代になりました。
この時に感じたのは、ネットワークやサーバ機器に関する知識の大切さと、セキュリティへの意識。
実際、FTP情報を大切に預からなくてはいけない、制作が終わったら破棄しないといけないと強く意識することになった事件だと思います。
FTP ってなんだろう
漫画やアニメの世界だと、インターネットという電脳空間(情報の海のようなイメージ)にダイブ! みたいなピカピカ光る空間に飛び込んでいく壮大でカッコイイ描写がされていますが、それは扇情的なイメージで、実際のインターネットは1台のHDDめがけて遠隔で自分のパソコンを通信接続するという単純なものです。
なんか電脳とかダイブとか言ってるけど、仕組みはカッコよくもなんともないですね。
インターネットは検索してほしい情報を取得するもの、というのが当たり前なイメージがありますが、実際には情報を公開している人がいるからこそ成立しているわけです。情報公開者なくして、インターネットの成功はありえません。
FTP を使ってサイトを構築する人。
それから、FTPを使わなくても ブログ などで情報を公開している人。
そんな人たちは、自分たちがインターネットを面白くしているんだ、と誇ってほしいです。
みんなが世の中の情報をアップデートしている、そんな世界。
FTPとは、そんな人のためのツール。
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