アフォーダンスとシグニファイア


書いたつもりになって終わってしまっていたノーマンによるアフォーダンス事件の、その後。
ノーマンは著書 “Living with Complexity” を出版(2010年10月)。
自らも誤用を認めた「アフォーダンス」とギブソンの提唱した真のアフォーダンスの言葉の意味を区別するため、デザイナーの使うアフォーダンスを「シグニファイアsignifier)」と呼ぶことを提唱しました。
ノーマンはアフォーダンスの誤用としていますが、ユーザーインターフェイスに新しい概念を吹き込んだことには間違いありません。
ギブソンのアフォーダンスは「知覚されない」環境が生物に与える生きていく中で利用できる価値。
それに対しノーマンのアフォーダンスは「知覚されない限り存在しない」概念としたため「ユーザーが知覚できるようにアフォーダンスを付加できる」という言い回しが発生し、その手法があるとしたものです。
デザイナーがアフォーダンスを付加できるものが「シグニファイア」という関係になります。
シグニファイアを通じることでデザイナーは有効なデザインを伝えられる。


この概念の登場により、UI はシンプルであれ、としていたノーマンは「複雑さとの共生」を掲げます。
アフォーダンスは問題となる行動を許さない。
それが問題の隠ぺいにつながり、結局のところ問題は解決しない。
世界にはシステムの「複雑さ(complexity)」と、自分が処理できない受動的な「ややこしさ=混乱(complicated)」がある。
ピアノには 80 個以上の腱とペダルがあるが、それをややこしいという人はいない。
何オクターブもの音階を出し強弱さえも表現できるピアノの内部的なシステムは複雑だが、洗練された鍵盤というインターフェイスがあることで、プレイヤーは簡単に演奏に集中できる。
複雑さをいかに扱うか。
これがデザイナーの考えるお仕事。
簡単にする、という意味では決してない。

2012/12/12
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