よく訓練されたデザイナーがメールに書く、7つの秘密


商業デザインや工業デザインが結果を求めるものであるならば。
過程がそもそもの前提にあるデザインという仕事の本質が、デスマーチを生むのだとも思う。
経験と未経験の違いの差は、俗に言う「引き出し」で。
未経験に近い人が、どこかで見たビジュアルをそのまま真似て作り、なんかできてるように見えるけど結果的に失敗するというパターンは多いと思う。
それは単純に成果物をそのまま真似ただけだからで、問題の解決策としての考え方という過程がすっぽり抜け落ちているからなんだろうけど、そのストーリーを「訓練されていない」エンドユーザーが認識できるわけがないし。
イラストやグラフィックといった技巧的な細部は戦術的。
デザインという工程には、ポスターでもバナーなどのどんなに小さいクリエイティブにも、情報デザインやコミュニケーションデザインといった論理的で戦略的な要素が含まれます。
こう書くと毎回「じゃぁ論理的に説明して」って言われるので。
一般的にイメージのわき易い「メールの書き方」という部分で、コミュニケーションデザイン的な思想で書いてみる。
普段なんとなく目にしていて、そのままスルーしていたようなことを改めて発見してくれたら、過程や発想なんかが共有できると思うけどどうだろう?

【1】添付ファイルがある時、件名(題名)にファイルサイズを書く


件名のところに入れる意味が分からない、と言われたことがあったのですが・・・。
相手側のモバイル環境での受信時や、相手側の措定以上のファイルサイズを送信した場合のことを考えています。
メールが「受信中」になってしまったままの場合。
「メールアプリがフリーズしているのかな?」と考える場合も多いのですが。
ファイルサイズが明記されていれば「巨大なサイズの添付ファイルを持つメールを受信しているから時間がかかっている」という判断基準を与えます。
またリモート接続の場合は、このメールは後で受信しよう、とか受け取り側の自由度を発生させることができるから。

【2】メール内の段落に番号を振る


僕の書くメール内には、よくパラグラフに番号が振られているので不思議に思ってる人も多いと思うのですが。
伝えたい内容を項目別に分けているというわけではなく。
ひとつのメールの文章の中で 3 つのことを質問をしたはずなのに、答えがそのうちの2つぶんしか返ってこなかった。
などという状況の解決を想定しています。
相手にこのメールには 3 つの確認項目がありますよ、と認識させているのです。
この方法だと、きっちり欲しい返事が返ってくるので、抜けが無くなって超便利。
流し読みされても、業務の伝達もシンプルになります。

【3】URLを書く、見た目の確認用画像を添付する


依頼されたバナーを制作してサイトに設置しておきましたよ、とか。
イラストレータデータで作って納品しておきましたよ、とか。
業務には様々な状況があると思うのですが、他者にも状況や成果物が面倒いらずのアクションで確認しやすいように、道筋を用意します。
この場合のバナーなら実際に貼られた URL。
イラレデータなら書き出した jpg 画像データなどです。
自分がインストールしてある Adobe Illustorator は、誰でもインストールしてあるわけではないので。
WEB上にアップロードするファイルでは無いので、意味の通じる日本語のファイル名にしてあげると親切。
ローカルのみで扱うファイル名なので全角=WEB用じゃない、というメタファは、ファイルの正体を明確にして便利です。
WEB技術者なら作った本人でなくても「pic_001_バックアップ.jpg」とかのファイル名は、完全にWEB上で使ってないファイルだと判断できます。

【4】日時は誤解を与えないところまで書く


テクニックでは無くマナーみたいなものだと思うけど、よくある間違いが「9時」が午前なのか午後なのか、とか。
できるだけ相手が間違えないようなところまで書くと、お互いの意識のズレが無くなります。
日付にしても曜日まで書くと、相手がイメージしやすくて間違いがなくなるみたい。

【5】本文の頭に宛先を書く

メーリングリストや複数人に送信する際には、誰向けに出したのか、誰から返事が欲しいのかを明確にするために宛先を必ず記入。「誰かが返事を出すだろう」とか「自分は関係ない」という感覚を避けるため。
メーリングリストだと送信先で判断できないから、社内メールとかだと必須。
「関係者各位」という書き方は考えることのできない人の実例。
自分で送り先の人を選んでるのに「関係者ってどこまで? 俺入ってるの入ってないの?」という疑問を相手に与える。
主観になりそうな場合は、逆に書かない方が「全員」という意味で混乱させないと思う。

【6】署名欄(シグネイチャ)はプロフィールではなく連絡先を書く

「署名」という言葉の響きから名刺みたいなイメージあるけど。
使い勝手を考えると、メール以外での連絡先のみを書くべきだと思う。
メールから連絡先を拾ったりとか、緊急で電話しなくちゃいけない場合とかに書かれてるとすごく助かるから。というか、それで便利だったと思うことが誰にでもあると思う。
という使い方の理由で、社内メールでは連絡先が必要ないから消して出す。

【7】改行しない、行の最初に空白(インデント)を入れない

旧時代から伝統的なメールの書き方ルールがあるのだけど。

・1行は全角36文字以内。それ以上は改行を入れる。
・左右に1文字分、空白を入れる

・・・とか。入社時に一番最初に習うやつ。
でもこれ、現時代には少し迷惑なルールで。
スマホで受信した場合にガタガタに崩れて表示されて、逆にすごく見にくい。
モバイル環境を考慮していないルールなのですよね。
紙媒体とWEBメディアの違いみたいなもので、「見やすい改行」は必要ないのかもな、とも思う。
文章の最後に「iPhone から送信」って書かれたメールが返ってくると、なんだか複雑な気持ちにもなりますね。
逆に PC からのメールでもこのキーワードを最後に打ち込んでおくだけですべての書き方ルールが許されるという、魔法の言葉でもありますね。
── ということで、メールの書き方ひとつでも、デザイナーはそんな風に考えます。
基本的に相手のことを考えてメッセージが伝わればそれだけでいいわけですが。
「きれいに」という視点ではなく、「伝わる」という視点が大事というのが、なんとなく理解していただければ。
「良いデザイン」「悪いデザイン」の判別・評価がしやすく、デザイナーの職務をなんとなく把握できるかと思います。
長文を書いただけの意味がありますね!
そういう意味では、面倒なルール無しで、吹き出しのメタファで一言ずつ語り掛けるようにメッセージを送付できる LINE というコミュニケーションツールは、よくできてるなぁと感心します。まぁ無料通話アプリのおまけ機能という棚ボタだったんですけどね。
デザイナーが創造したものは、より効率的で快適な手段を提案し、他人のライフスタイルを変え、世界に影響を与えていくものです。たぶん。
あと、もう添付ファイルっていう時代でもなくなってて、オンラインストレージの時代ですね。
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