目を背けてはいけない。ベトナムで戦争博物館を見てきた。


ベトナム・ホーチミンにある「戦争証跡博物館(せんそうしょうせきはくぶつかん)」に行ってきました!
ベトナムといえば、何を思い浮かべるかですが、「ベトナム戦争」を思い浮かべる人も多いかと思います。
ベトナム戦争は南北に分裂したベトナム自身が起こした戦争ですが、そこに介入したアメリカやソ連の代理戦争でもあるという凄惨な戦争でもありました。
そして何より、村や畑、市街戦が中心となった戦争であり、住民を巻きこみまくった大量虐殺の悲劇の事件でもあります。
この施設には戦争で使われた戦車や戦闘機、遺物や報道写真など、当時の「事実」が収められているということです。
美しくもなく、喜びもない。空虚で記録があるだけの、ただの博物館。



訪れていた客層は、意外に白人が多かったです。
ベトナム人とかはあんまりいなかったような。
どこの国から来たのかまで判別できませんが、なんだかなという気持ちになりました。



ヘリコプターや、戦車とか。
プラモデルや映画では何度も見たものですが、手が触れられるリアルで見ると、これと向き合う兵士や一般市民の気持ちがなんとなく分かります。

キャタピラは悪路を走行するための優れたデザインというか発明だと思うのですが、こうしてディテールまで見てみると改めて戦争にこの技術を使うなんてという気持ちが。

屋外に戦闘車両などの展示、屋内に記録や資料が展示されているようです。意外に広い。
全部ガッツリ見るには3時間ぐらいかかりそう。




戦闘機もあります。
雨ざらしのはずなのに、意外に状態がいいです。

ヘリの中にはガトリングガンが。
銃口を向けられる恐怖というのは、向けられた経験が無くても伝わってきます。
この展示のところに何か売っている人がいたのですが、何だかさっぱり分かりませんでした。

アンブッシュ迷彩のアイテムやカモフラージュ付の帽子など、実用的?なものが売ってました。

かと思うと、お土産屋さんには平和を願う子供たちが描いたポストカードなども売られています。

屋外の展示の片隅にあった、この一角がまた怖い。

収容所を再現した模型が置かれている場所なのですが、その空気感が半端ないです。

囚人を捉えておくための檻。

墓碑。
ここまでは、まだいいほう。

これとか・・・もう・・・。
進撃の巨人とかに出てきそう。

そして、これ。
ギロチン。
あんまりこういう記録って残ってなさそうなんですけど、残ってるものなんですね。
日本では残酷な処刑をイメージさせる代表的なモチーフのようなものがありますが、それはたぶん漫画か何かのイメージで、当時としては、一瞬ですべてを終わらせることができる(苦痛をともわずに死ねる)人道的な発明だったようです。


裕福な貴族しか使うことを許されなかったセレブな処刑を、貧富の差に関わらずあまねく層に普及させるためのものとのことですが、それでもこれを執行したフランスの恐怖政治などの背景を考えれば、圧政のシンボルともいうべきものにしか見えません。
このギロチンのある部屋は、寒気さえも感じる静寂さが痛いほどで、自分の呼吸さえもおかしくなるようでした。

弾頭とかもあります(無造作)。

そして、これから屋内へ。

3階建ての室内は青い光に包まれていて、少し冷たい雰囲気がします。頭が冷やされるよう。

銃やライフルなども展示。
これぐらいは軽い方。

あまり注視しない方がいいと思いますが、現地の写真には、人が死んだ姿が正直に映っています。
戦争で死んだ人の姿はむごいです。
満足に人の姿を保っていない、肉片と化したものを、兵士が運び出している写真など。

日本から提供された記録などは、日本語のキャプションがあるものがありました。
沖縄戦のことにも触れられています。沖縄の人も見ておいた方がいいかも。

日本からも戦争カメラマンが多く参加していて、様々な記録が寄贈されています。

「エージェント・オレンジ」と呼ばれる枯葉剤の影響で、森が死に、人が脳や神経を病み、奇形の胎児が生まれてくる様子も記録されています。
「オレンジ」というネーミングから、おっ、という気持ちで興味をもって見始めましたが、最後の方は切なさでいっぱいになりました。ホルマリン漬けの奇形の胎児も展示されていて、人間の非情さを目の当たりにすることになります。

掴みとった平和は、砂が指の間からこぼれおちていくように、人々の記憶から忘れられていきます。
戦争カメラマンのレンズは、生と死を分かつ兵士たちの感情を写し、不安げに怯え逃げる市民たちを写し、そして愛する人を失い死に直面した家族たちの姿を捉えています。
  彼らは神様に自分が明日生きていることを祈り、一人でも多くの「敵」を殺すことで早期に戦争を終わらせることを望む。
  神様は、いったいどちらの味方をするというのだろう?
従軍牧師の写真には、そんな一文も添えられていました。
そう考えると、全知全能の神様という概念は、成立しない不思議も今更だけど思いますね。
死体の写真や奇形児の実物など、夥しい生命の残骸。目を背けたくなるような現実がそこにはあるのだけど、背けてはいけないリアル。
僕等世代は、受験対策のため暗記しやすい日本史を選択する人が99%の時代だったのですが、僕は実は世界史選択(現代は世界史必須と聞いてびっくり)。それでもベトナム戦争は名前だけ知っているだけで、映画の中でしか見たことがなかった気がします。
このリアルは、「リアル」として自分たちが受け入れ、そして同じ過ちを犯さないようにする必要がある。
この博物館はアーカイブですが、コンテンツとして発信していく必要がある。そんな風に思いました。
■War Remnants Museum(公式・英語あり)
http://www.baotangchungtichchientranh.vn/
ベトナム戦争 – Wikipedia

2015/02/09
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