僕は、「現代美術」というカテゴリがあんまり好きではないです。
現代アートという作品群は、とにかく情報伝達スピードが遅く、背景やテーマを考えてようやく分かったような気持ちになるというのが非常に面倒くさい。というか、もうちょい親切に分かりやすくするべきでは、とか思うくらい。
僕の中の現代美術というのは、もっと現代の問題や風刺をテーマに、気づきや自分なりの答えを考えさせられてしまうもの。
そんな問いかけをビジュアルで分かりやすく気づかせてくれるもので、問題からして分かりにくいオラオラ系のものではないイメージ。
今の現代アートって、分かりにくいことがプレミアム感がある感じで、「なんだか分からない」がブランドになっているような気がする。そんなとこが嫌い。背伸びして芸術文化に触れるような体験はゴージャスで有意義な時間の流れだと思うけど、どうしても現代アートは穿った目で見てしまう。
なので、現代美術とカテゴライズされた展覧会などはほとんど観に行かないですが。
どちらかというと「現代美術が理解できない」と言うと、ドヤ顔で「え、わかんない? 感性ないと分かんないと思うなぁ。私には分かるけど? やっぱり芸術は教養があって同じレベルの人にしか理解できなくて、レベル低い人には分かんないよね」的なことを言ってる人をニヤニヤ見てる時間が好き。
というわけで、「あいちトリエンナーレ」を観に、名古屋に行ってきました。
あいちトリエンナーレは、愛知県で行われている国際芸術祭です。今年で2回目。
『トリエンナーレ』という言葉は、美術用語かもしれないですが、イタリア語で『3年に1度』という意味です。
2年の「ビエンナーレ」、4年の「クアドリエンナーレ」といった言葉があります。
日本だと「瀬戸内国際芸術祭(Setouchi Triennale)」が有名ですね。
今回のトリエンナーレ、予算的にもかなりきつく、宣伝が全くできていないとか。
確かにパンフレットが全く充実していないし、WEBサイトを見てもどこからどう見ていいのか全く分からない。
何を伝えたいのか意味も不明です。
昨年の開催では、草間彌生デザインの水玉柄プリウスが市内を走りまわるという広告効果もあって、最終的に目標数の2倍近い 57万人以上の動員数を記録しました。
プリウスな理由は、トヨタお膝元である愛知県だからです。その他にも協賛・協力企業には一流企業の名前が並びます。
トリエンナーレのように芸術をテーマにした祝祭というのは、都市と市民を巻き込んだお祭り騒ぎのようなもので、内容そっちのけで、とにかく便乗しなきゃいけないような雰囲気にんるものですが、参加しているボランティアの人数は、かなりの人数になったらしいです。もちろん無償。
展示物の傍らに必ずボランティアスタッフがいるので、写真撮影が可能か聞く傍らに話しかけたりもしてみたけど、結構なんだかわかんなくてとにかく参加してるという意識の人もいた。
ただ美大生っぽい可愛い女の子から、老人の男性まで、かなり年齢幅も広く、愛知県という県民性の底力を感じた。
都市部だから意識も違うのだろうか。
写真は格安駐車場を探してうろうろしていた際に見かけた「進撃の巨人」ラッピングカーでトリエンナーレとは全然関係ないです。
あいちトリエンナーレは、施設内の展覧会ではなく、街中全体であらゆる場所で企画展やパフォーマンスが行われる集合体です。
文化芸術センターや名古屋市美術館の中の他、商店街や公園といった場所でオペラやパフォーマーや建築関連などの企画展が見られます。
建築のコンセプトが入ったのは、震災で倒壊した家屋などへのメッセージでしょうか?
この建築のイメージは、ところどころにあって強いです。
「空飛ぶ泥舟」
http://aichitriennale.jp/artist/fujimori_terunobu.html
窓から中に人が居るのが見えたので驚いたが、予約制で入れるとのことだった。
1日ごとに、当日の予約をとるとのことだったので、午前中から早めに行って予約しとけば良さげ。
横山裕一
http://aichitriennale.jp/artist/yokoyama_yuichi.html
トヨタから提供されたプリウスに「ネオ漫画」をラッピングしたもの。
正直プリウスの必要性を感じなかった・・・。
アルフレット・ジャー
http://aichitriennale.jp/artist/alfredo_jaar.html
真っ暗い中にぽつんとあったので何だろうと近づいたら大量のチョークでびっくりした。
背後の入口横に無言のボランティアスタッフが椅子に座っていて、それにもびっくりした。
入口から入ってすぐのいきなりの展示物なので、みんな「?」となってた。
真っ暗の部屋の左右に通り口があるのだけど、左右対称の場所にあるので、通る人たちが鏡なのか入口なのか分からず手探りで空間を探っているのがちょと間抜けな感じ。ちなみに左右の部屋とも入ると何もない真っ暗な空間で、黒板が壁にいっぱい貼り付けられているだけの部屋。
みんなこの部屋に入って何もないので「?」マークを出しながら出ていくのだけど、実は稀にぼんやりと文字が浮かび上がるみたい。
「生きしめん」みたいな文字だった。
それとも、生に関わるキーワードだったんだろか。
この黒板、なんか怖い感覚あるなぁと思っていたら、震災で廃校になった学校の黒板を集めてきたものらしい。
今回のトリエンナーレは「震災からの復興」的なテーマもあるらしいのだけど、あんまり関係ないのも多かった。
杉戸 洋
http://aichitriennale.jp/artist/sugito_hiroshi.html
青木淳
http://aichitriennale.jp/artist/aoki_jun.html
布で空間を作っていてグラデーションが綺麗だったけど、どう進んでいいか分からず迷子になってウロウロしている人が多数。
ちなみに出口の正解は、おじさんの座っている椅子の後ろ。いかにもスタッフオンリー的なドアが出口。
おじさんに話しかけない限り絶対わかんないと思う。
出口もこんな感じなのは、実は入口が変わっていて。
普段の名古屋市美術館とは逆の導線が仕掛けられています。
建築家である青木淳さんが黒川紀章の建築デザインを独自解釈して導線を再構築したという、美術館全体の導線が展示物になっていました。
僕は当日券を購入した際、チケット売り場でボランティアスタッフに声をかけられて「入口は反対側」と聞いて「?」となったのだけど、そういう意味があるらしい。
前もって知識に入れてこないと、全く伝わらないですね。
このオブジェクトは、名古屋市美術館の裏側にあるものです。
これが一番強烈だった。今回、裏口に回らければ気づかなかった。
この他にもたくさん展示物があります。
街中の展示物も含めると、数日かけないと全部は見て回れないですねぇ。
一度購入したチケットは、違う日でも全ての会場で使えるので便利。
ただし同会場には、同日中は何度も入れますけど、違う日は入れません。チケットの譲渡も禁止です。
海外のアーティストの展示物はなかなか見る機会がないので、現代アート好きには楽しめる内容だと思います。
愛知県という都市を巻き込んだ取り組みというものに興味がある人にも、ぜひ見ていただきたいです。
ビートたけしやオノ・ヨーコといった人の作品も見られます。
僕もまだまだ全部見て回れていないので、お休みがとれるようなら見逃した部分を見てきたいです。
コメント