この都市でいちばん美しい看板


IBM は現在「Smarter Planet」というコーポレート・ビジョンを進めていて、それがコミュニティ・デザイン的な観点から見ても非常に面白いです。
IBM Smarter Planet 地球を、より賢く、よりスマートに – Japan
http://www-06.ibm.com/innovation/jp/smarterplanet/
スローガンは「地球を、より賢く、よりスマートに」。
自慢の IT 技術力をもって世界に改革をもたらし、人々の暮らしを効率よくする考え方だと思うのだけど、その中のひとつ「Smarter City」は都市機能を支援していくプロジェクト。
一見、街角にあるただのコーポレートイメージの企業広告なのですが、その形にちょっとしたアレンジが加えられることで、そこで暮らす人の生活を豊かにすることを実現しているのです。
例えば、上の写真では、ブルー×ホワイトのグラフィックの看板の上部が曲線になっています。
こうすることで、雨を凌ぎ、強い日差しを遮る軒下になるというデザインになっています。
グラフィックのストライプも店先のシェードを想像させるデザインで、よくできていますよね。



こちらのオレンジの看板は、下部が曲線になっていて、赤のストライプが入っています。
遠目からは夕焼けの中にあるベンチのように見えるイメージで、実際にベンチとなって人々の休憩場所になったり、ちょっとした雑談をするスペースにもなっています。

このグリーンの看板は、もう見た目そのまんまで、階段の上に被さってスロープになっていますね。
歩いてきた女性も、何の違和感もなくスロープを使って重いキャリアを運んでいく様子がムービーの中にもあります。


この看板には IBM のコーポレートスローガンの「より賢く、よりスマートに」というコピーの他に「あなたも都市を良くするアイデアを発信しませんか?」というコピーと一緒にキャンペーンサイトの URL が記されているだけ。
でも、このアイデアのユニークさもあって、キャンペーンサイトを覗きたいという欲求に繋がりますね。
動画の中のシーンにもあるのですが、実際にはあまりのアイデアの素晴らしさにスマホのカメラで撮影してシェアするという人が多く、それが拡散されて広告効果をあげているようです。
IBM という企業について。
IBM といえば、数年前はユーザビリティ、アクセシビリティといった概念を世界に先んじて実践していて、今でも使っている人は多いと思うのですが、aDesigner というツールを開発し無償で提供したり、視覚に障害を持つ人でも web を楽しめるようにと、ホームページリーダーという web ページを読み上げるソフトとか、どう考えても一般人には需要が無いようなソフトを開発していました。
ただ、まじめに web 業界で仕事をする人にはこれらのツールはかなり便利で「使える」もので、IBM という企業の考え方と社会への貢献にリスペクトさえ抱くものでした。
上記の2つのソフトは、僕が駆け出しの頃の成果物のチェックツールとしては大活躍し、このツールの存在によって、現在、僕が掲げている「文書構造」や「オーガニックhtml/css」といったスキルのルーツになったのだと思います。
この頃の IBM の徹底ぶりは常識をこえていて、例えば現在販売されているソフトなどは「Windows版」「Mac版」と2つしかリリースされないところ、かなりマイナーな OS までカバーして開発・販売までしていて、そのブレない突き抜け方に感動すら覚えたものでした。
IBM って、今の派手好きな若い子はあまり知らない企業なのかもしれないけど、技術的なものだけでなく、そういうマインドを大事にしてきた企業でもあるのですよ。
プロの WEB デザイナーが使ってるソフトといえば「Dreamweaver(何度も言うけど、発音は「どりーむうぃーばー」)」だと思われていますが、僕は駆け出しの頃は両方使っていたので2つのソフトの特徴が分かるのですが。
Dreamweaver が優れているのはコードを書く際に便利な機能が充実していることで、レイアウトしかしない凡才デザイナーにとっては、実はホームページビルダーの方が多機能で使いやすいと思います。
Dreamweaver にはデータベースに直結する機能もあって、WEB クリエイターにとっては WEB コンテンツが作りやすかったっていうだけでした。現在の「プロ」で実際使っててこれで給料もらってる人でも「え? そんな機能あるんですか?」って人多いです。DW 使ってて半分以上の機能を使っていない人はたくさんいるんじゃないかなぁ・・・。
そういえば値段も15倍(?)くらい DW の方が高いんですよね。
あの頃からタケノコのように大量発生した WEB デザイナー達の今後がちょっと心配ですね。
ホームページビルダーが優れていたのは、その UI(ユーザーインターフェース)。
ビジュアル的には普通に見えると思うのですが、初心者でもすぐに分かるというか、「分かる気がする、自分でも作れそうな気がする」という気持ちにさせる、かなりハイレベルなものでした。個人的には、今でもあれをこえる衝撃にはあったことないし。
だから初心者に薦めるときには、今でも僕はホームページビルダーの方を薦めます。
Dreamweaver の方を薦めると、後で使い方を説明するのが結構面倒い)
ただ、IBM が売り方が下手っていうか。
どこよりも早く GIF アニメのツールを導入したり、英語サイトが作れる翻訳機能との同期を実現したり、いろいろ時代を先取ってやるんだけど、どうしても他社に負けるというか。
IBM のブランド戦略の失敗というか、上層部の力不足なんですかね。
どうしても野暮ったいイメージが抜けなかった。企業としてのポテンシャル高いのに残念。
佐藤可士和とかが関わっていたりすれば、また違った現在の姿になっていたとも思うのに。
ユーザビリティという言葉を広め、概念を広めた立役者でもあるのに、次々にコンセプトや市場を他社にくわれまくるという、弱い企業でもあるのだけど。
お人好しなところもあるけど、僕は、IBM という企業は好き。
地元企業というわけもないけど、応援したい会社です。
IBM のパソコン持ってないけど。

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コメント

  1. うーたん より:

    こんにちは。
    サイトのデザイン話がおもしろくて、いつも読ませていただいています。
    私はデザインの仕事をしていて、スタッフの前で「Bare Paint」について発表した事があります。今回、IBMのSmarter Citiesについて話そうと思っています。IBMの企業については沢山書かれていますが、掲載した3点の写真とプロジェクトについてもう少し知りたいなと思って、IBMのURLを探したのですが見つかりませんでした。
    お忙しいところ大変恐縮ですが、もし可能であれば、掲載されているURLを教えていただけないでしょうか?難しいようであれば、そうおっしゃって下さい。
    よろしくお願いいたします。

  2. yasukawa より:

    コメントありがとうございます!
    デザインの話は書いていると自分の中でも整理できてきて面白いので、それが他の方に喜んでもらえると僕も嬉しいです。
    Smarter Cities は世界各国で散発的に行われているので、全ての内容が IBM のサイトには紹介されてないかもです。このページの内容は動画からなので。

  3. うーたん より:

    こちらこそありがとうございました!
    返事が遅くなってすみません。
    動画からとったから、なお分からなかったのですね。
    紹介されていた、テープアートがおもしろかったので、会社で話しました。作品の質もそうですが、素材を使おうとした発想、人物との関連性がおもしろく魅力的ですよね!

  4. yasukawa より:

    カセットテープで昔のシンガーなどを模したアートですね。
    あれ、芸術作品としてもすごい良いですよね!
    ああいういろんな人の才能というか「生み出す力」のようなものに、たくさん触れたいと思っています。

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